1on1とは、上司と部下が1対1で向き合い、部下の成長を支援するために行う定期的な面談のことです。
「1on1を導入したいが、何から始めればよいかわからない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、1on1の基本的な意味から注目される理由、具体的な進め方について詳しく解説します。
目次
1on1とは
1on1とは、上司と部下が1対1で行う定期的な面談のことです。
厚生労働省の調査結果の概要・企業調査では、以下のような結果が報告されています。
上司による定期的な面談の実施(1on1ミーティング等)が68.3%と最も高い
引用:厚生労働省「調査結果の概要・企業調査」
つまり、多くのビジネス現場において1on1はすでに広く浸透しており、部下の成長支援やコミュニケーション活性化を目的として活用されています。
1on1の意味や進め方を正しく理解すると、仕事のパフォーマンス向上にもつながると考えられます。
目的は部下の成長を促進させること
1on1の目的は、部下の成長を促進させることです。
1on1は業務の進捗確認ではなく、部下が抱える仕事上の課題やキャリアの悩みに向き合うための場だからです。
日々の仕事の中では、部下が感じている不安や将来への疑問を上司に打ち明ける機会はなかなかありません。
1on1という専用の時間を設けることで、部下は自分の課題を整理しやすくなり、上司も一人ひとりの状況を深く把握できるようになります。
適切なアドバイスやフィードバックも、部下の状態をしっかり理解した上でこそ、効果を発揮します。
1on1は、「雑談の時間」ではありません。
部下一人ひとりの成長が積み重なることで、チーム全体の組織力向上にもつながる、ビジネスにおいて意味のある取り組みです。
人事評価面談や日常的なコミュニケーションとの違い
1on1は、人事評価面談や日常的なコミュニケーションと目的も進め方も異なります。
それぞれの場が果たす役割が、根本的に違うからです。
3つの違いを整理すると、下の表のように明確に区別できます。
| 項目 | 1on1 | 人事評価面談 | 日常的なコミュニケーション |
|---|---|---|---|
| 目的 | 部下の成長支援・課題解決 | 評価結果のフィードバック | 業務上の情報共有・連絡 |
| 頻度 | 週1回〜月1回程度 | 半期・年1回程度 | 随時 |
| 主役 | 部下 | 上司 | どちらともいえない |
| 内容 | キャリア・悩み・成長テーマ | 目標達成度・評価説明 | 業務報告・確認事項 |
1on1では部下が主役となり、仕事上の悩みやキャリアについて自由に話せる場が保障されます。
人事評価面談は上司が評価を伝える場であり、日常的なコミュニケーションは業務連絡が中心です。
3つを混同したまま運用すると、1on1本来の意味が薄れてしまいます。
ビジネスにおいて1on1を効果的に活用するには、目的の違いをチーム全体で正しく理解することが大切です。
1on1が注目されるようなった3つの理由
近年、ビジネスの現場で1on1が急速に広まっています。
働き方の多様化や組織課題の変化により、従来のマネジメント手法だけでは対応しきれない場面が増えてきたからです。
具体的には、「コミュニケーション機会の減少」「組織へのエンゲージメント向上」「自立型人材の育成」という3つの理由が挙げられます。
コミュニケーション機会の減少
1on1が注目される背景には、職場におけるコミュニケーション機会の減少があります。
厚生労働省の調査結果の概要・企業調査では、以下のような結果が報告されています。
従業員同士の間で、コミュニケーションが取りづらくなったから 25.5%
引用:厚生労働省「令和7年度 テレワーク・ワンストップ・サポート事業 テレワークの労務管理等に関する総合実態調査 報告書」
つまり、働き方の変化がコミュニケーション不足を引き起こしていることがわかります。
コミュニケーション不足は、認識のズレや信頼関係の希薄化といった深刻な問題を引き起こしかねません。
1on1で意図的にコミュニケーション機会を確保すると、以下のような効果が期待できます。
- 上司・部下間の信頼関係の構築
- 認識のズレ・コミュニケーションエラーの早期発見と修正
- 部下の小さな変化や悩みへの気づき
仕事の質を高めるためには、日常的な対話だけでは拾いきれない情報を1on1で補うことが大切です。
働き方が多様化するビジネス環境だからこそ、1on1には大きな意味があるといえるでしょう。
組織へのエンゲージメント向上
1on1は、従業員の組織へのエンゲージメント向上にも大きく貢献します。
エンゲージメントとは、従業員が組織に対して「貢献したい」「ここで働き続けたい」と感じる意識のことを指します。
近年、エンゲージメントの低下は多くの企業で深刻な課題となっており、人材の離職やモチベーション低下を招くケースも少なくありません。
1on1で部下一人ひとりのキャリアの悩みや仕事への想いに向き合うことで、組織への帰属意識が高まり、モチベーション向上にもつながるでしょう。
上司から定期的に関心を向けてもらえる環境は、部下にとって大きな安心感をもたらします。
1on1はただの面談ではなく、ビジネスにおける組織力を底上げするための取り組みです。
自立型人材の育成
1on1は、自立型人材の育成にも効果的な取り組みです。
1on1では上司が答えを与えるのではなく、質問の投げかけやフィードバックを重ねることで、部下自身に考えさせる機会を意図的に作れるからです。
自立型人材とは、上司からの指示を待つのではなく、自ら課題を発見して行動できる人材のことを指します。
ビジネスの現場では、指示待ちの姿勢が染みついた人材が増えていると感じている人も多いでしょう。
1on1で「どう思う?」「どうすればよかったと思う?」と部下に問いかけることで、自分の仕事を振り返り、自分の頭で考える習慣が身につきます。
上司が答えを与え続けるスタイルでは、部下の思考力は育ちません。
問いを立て、考えさせ、行動を促す1on1のサイクルを継続することが、自立型人材育成の土台となるでしょう。
1on1の進め方
1on1を効果的に運用するには、事前の準備から実施後のフォローまで、一連の流れを把握しておくことが大切です。
「とりあえず話す時間を設けた」だけでは、部下の成長にはつながりません。
「目的の共有」「日時・場所の設定」「テーマの準備」「実施」という4つのステップを順に押さえることで、1on1の質は大きく変わるでしょう。
導入時は従業員に目的を共有する
1on1を導入する際は、事前に従業員へ目的を共有することが大切です。
共有すべき内容は、以下の4点が挙げられます。
- 1on1を導入する背景・理由
- 評価や監視が目的ではないこと
- 部下にとってのメリット
- 実施頻度・時間・進め方のイメージ
上記をあらかじめ説明しておくことで、部下は安心して1on1に臨めるようになります。
特に「評価とは切り離された場である」という点を明確に伝えることが、信頼関係を築く上で重要です。
目的が正しく伝わってこそ、1on1は部下の成長を支える場として機能するでしょう。
実施する日時や場所を決める
1on1の効果を高めるには、日時と場所をあらかじめ固定しておくことが重要です。
日時・場所を決める際は、以下のポイントを参考にしてください。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 頻度 | 週1回〜月1回を目安に、無理なく続けられるペースで設定する |
| 時間 | 30分〜1時間程度が一般的。長すぎると集中力が続きにくい |
| 場所 | 会議室より、カフェや静かなオープンスペースなどリラックスできる環境が望ましい |
| 固定 | 曜日・時間帯をあらかじめ決めておくことで、双方が準備しやすくなる |
場所選びひとつで、部下の本音を引き出しやすさが大きく変わります。
堅い雰囲気の会議室では、部下が緊張して本音を話せないケースも少なくありません。
部下がリラックスして話せる環境を意識することが、1on1の質を高める上で大切です。
日時と場所を整えることが、継続的な1on1運用の土台となるでしょう。
テーマ・ネタを用意する
1on1を充実した時間にするには、事前にテーマ・ネタを準備しておくことが大切です。
準備しておきたいテーマ・ネタは、以下の表を参考にしてください。
| 課題 | 具体例 | 目的 |
|---|---|---|
| プライベート | 休日の過ごし方・体調・趣味 | 関係構築・心身状態の把握 |
| 仕事への思い | 今の仕事のやりがい・不満・改善点 | モチベーション把握 |
| キャリア・成長 | 将来の目標・身につけたいスキル | 中長期的な成長支援 |
| 前回の振り返り | 前回の1on1後に実践したこと | 継続的な成長の確認 |
| 組織・チーム | チームの雰囲気・人間関係 | 組織課題の早期発見 |
当日の話題を部下に事前共有しておくと、部下も準備しやすくなり対話がスムーズに進みます。
また、過去の1on1の内容を振り返る際は、タレントマネジメントシステムの活用も有効です。
蓄積された記録をもとに対話を深めることで、1on1の質が高まります。
1on1を実施する
1on1の実施では、部下が主役になれる場づくりを意識することが重要です。
実施時に意識したいポイントは、以下の5つです。
- 話す比率は上司3:部下7を意識
- 否定せず、まず受け止める姿勢を持つ
- アドバイスより質問を優先する
- 決めたことや次回のアクションを明確にする
- 面談内容はタレントマネジメントシステムなどで記録・共有する
1on1で話した内容は、記録に残すようにしましょう。
記録を蓄積すると、上司は面談内容を振り返って改善点を把握できるほか、部下の成長を時系列で可視化することも可能になります。
タレントマネジメントシステムを活用すれば、面談記録を一元管理でき、上司・部下双方がいつでも内容を確認できます。
お互いが記録を共有できる状態にすると、1on1への目的意識も自然と高まるでしょう。
「記録を残す」という一手間が、1on1の質と継続性を大きく左右します。
Z世代と1on1を行う際の3つのポイント
Z世代(1990年代後半〜2010年代生まれ)は、上の世代とは異なる価値観や仕事への向き合い方を持っています。
1on1でZ世代と向き合う際は、世代特有の特徴を理解した上で進めることが大切です。
「キャリア観の尊重」「適切な距離感」「聞き役に徹した問いかけ」の3つのポイントを押さえておきましょう。
キャリア観を尊重する
Z世代と1on1を行う際は、まず部下のキャリア観を受け止めることが重要です。
Z世代のキャリア観には、以下のような特徴があります。
- 仕事とプライベートのバランスを重視する
- 社会貢献や仕事の意味・意義を大切にする
- 出世や肩書きより、スキルアップや自己成長を優先する
- 副業や転職にも積極的で、ひとつの会社に縛られない意識が強い
上記のような価値観を持つZ世代に対して、「そのキャリア観は甘い」「もっと上を目指すべきだ」といった言葉を向けることは逆効果です。
1on1では上司自身のキャリア観を基準にするのではなく、部下の将来像や働き方への想いを聞くことが大切です。
価値観の違いを認めた上で対話を重ねることが、Z世代との信頼関係を育てる上で欠かせないといえるでしょう。
上司として適切な距離を保つ
Z世代と1on1を行う際は、上司として適切な距離感を意識することが大切です。
避けるべき言動としては、恋愛や家族関係など仕事と関係のないプライベートへの踏み込みすぎが挙げられます。
また、「最近元気ないけど何かあった?」と頻繁に聞きすぎると、監視されているような圧迫感を与えてしまう場合もあるでしょう。
友達感覚で馴れ馴れしくなりすぎることも、上司としての信頼感を損なう原因になります。
適切な距離感とは、部下が話したいと感じたときに安心して話せる雰囲気を保ちながら、上司としての立場を崩さない関係性のことです。
部下のペースを尊重しながら、仕事やキャリアの対話を丁寧に積み重ねることがZ世代との信頼関係を育てます。
聞き役に徹して考えさせるきっかけを作る
Z世代との1on1では、上司が聞き役に徹し、部下自身が考えるきっかけとなる問いかけを意識しましょう。
部下の思考を引き出す問いかけには、以下のようなものが効果的です。
- 今の仕事で、一番やりがいを感じる場面はどこ?
- もし自分がリーダーだったら、どう対応する?
- 先週の仕事を振り返って、改善できそうな点はある?
- 今後どんなスキルを身につけたいと思っている?
- 理想の働き方に近づくために、今できることは何だと思う?
上記のような問いかけは、答えを与えるのではなく、部下自身に考えさせることを目的としています。
1on1で大切なのは、上司が解決策を提示するよりも、部下が自分の頭で考え、自分の言葉で語れる場を作ることです。
聞き役に徹する姿勢が、Z世代の自立的な成長を後押しするでしょう。

