テレワーク環境でも、勤怠管理は出社勤務と同様に求められます。
「チャットで報告させているが本当に大丈夫か」「今の運用が法的に問題ないか自信がない」と感じている担当者は少なくありません。
本記事では、テレワークにおける勤怠管理の重要性・現場課題について詳しく解説します。
目次
テレワークにも勤怠管理は必要!
テレワークであっても、勤怠管理は法律上で義務付けられています。
実際に、労働基準法では、以下のように定められています。
使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。
引用:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」
この規定は、テレワーク中の労働者にも適用されます。
「チャットで報告しているから十分」という運用では、法的な要件を満たせない場合があります。
テレワークでは上司が社員の様子を直接確認できないため、長時間労働や休憩未取得の問題が表面化しにくい状況です。
勤怠データが不正確なままだと、残業代の未払いトラブルにつながるリスクもあります。
テレワークは「見えない働き方」だからこそ、出社勤務と同等以上の勤怠管理が必要です。
感覚で運用している状態は法的リスクと隣り合わせのため、正しい管理の仕組みを整えることで従業員と企業の双方を守りましょう。
テレワークでも勤怠管理が重要な3つの理由
テレワークでも勤怠管理が重要な理由は、大きく3つあります。
上司が直接社員の状況を確認できないテレワーク環境では、オフィス勤務と異なり、勤怠管理上のリスクが生まれやすいためです。
テレワークを導入する上で、以下の3つは押さえておきましょう。
長時間労働の見えにくさ・出社社員との公平性・給与計算の精度など、どれか一つでも管理が甘くなると、企業全体の信頼や法令対応に影響が出ます。
それぞれの理由について、以下で詳しく確認していきます。
長時間労働を防ぐため
テレワークでは、長時間労働を防ぐための勤怠管理が重要になります。
通勤がなくなる分、仕事とプライベートの境界が曖昧になりやすく、気づかないうちに労働時間が伸びてしまうケースがあるからです。
労働基準法では時間外労働の上限を原則として月45時間・年360時間と定めており、テレワーク中の労働者にも適用されます。
時間外労働(休日労働は含まず)の上限は、原則として、月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできなくなります。
引用:厚生労働省「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」
企業側が把握できていない残業は、そのまま法的リスクに直結します。
テレワークで起きやすい長時間労働のパターンは、以下のとおりです。
- 始業・終業時刻が曖昧なまま業務が続く
- 深夜や早朝に業務連絡が入り、そのまま対応してしまう
- 上司の目がないため、休憩を取らずに働き続ける
- 成果を出そうとして自主的に残業しても記録に残らない
本人が「少し作業しただけ」と感じていても、積み重なれば過重労働につながります。
だからこそ、勤怠管理システムで労働時間を自動記録・可視化することが、長時間労働を未然に防ぐ現実的な手段です。
テレワークでも管理しやすいシステムを導入したい場合は、「勤怠管理システム比較27選!企業規模別に人気おすすめサービスを紹介」でサービスを比較しましょう。
出社勤務の従業員との公平性を保つため
テレワーク社員の勤怠管理は、出社社員との公平性を保つ上でも重要になってきます。
自己申告だけで勤怠を管理している場合は、「本当に働いているのか」という疑念が社内に生まれやすくなるからです。
出社勤務であれば、タイムカードや入退室システムで勤務実態が自動的に記録されます。
しかし、テレワークではその仕組みがない分、管理方法の差が不満につながりやすいです。
実際には、同じ時間・同じ成果を出していても、勤務実態が見えない状態では評価の信頼性が損なわれます。
「テレワーク社員は楽をしている」という不満はチームの士気や協力関係にも悪影響を与え、組織全体の雰囲気にも影響が出ます。
そのため、出社・テレワークを問わず同一の基準で勤怠を記録・管理することで、評価の透明性が高まるでしょう。
人事評価や昇給・昇格の場面でも客観的なデータに基づいた判断ができるようになり、組織全体の信頼関係を守ることにつながります。
残業代や手当などを正確に計算するため
テレワーク中の労働時間を正確に記録することは、給与計算の精度を守る上でも大切です。
以下の項目が勤怠データに反映されなければ、給与計算の誤りや未払い残業代の発生に直結します。
- 残業
- 中抜け
- 深夜労働
未払い残業代は、後から請求された場合に支払う義務が生じるため、企業にとって大きなコストリスクです。
実際に、労働基準法第24条では、以下のように義務づけられています。
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければならない
引用:厚生労働省「労働基準法第24条(賃金の支払)について」
そのため、勤怠データを不正確なまま放置すると、法的義務を果たせないリスクがあります。
「中抜け」は休憩として扱うのか始業・終業時刻で調整するのかを、就業規則や労使協定で事前に定めておくことが大切です。
在宅勤務手当を支給している企業では、出勤日数やテレワーク日数に応じた支給基準との整合性も確認が必要です。
勤怠データが不正確であれば、手当の過払い・過少支給が発生し、従業員からの不信感につながります。
勤怠データの精度は、給与計算だけでなくコスト管理全体の土台となります。
正確な記録体制を整えることが、健全な労務管理の前提です。
テレワークで勤怠管理する課題
テレワークの勤怠管理には、オフィス勤務にはない固有の課題があります。
見えにくい問題が積み重なることで、気づかないうちに労務リスクが高まります。
現場で起きやすい課題は、以下の4つです。
上記の課題を正しく把握した上で適切な対策を講じることが、健全な労務管理につながります。
それぞれの課題について、以下で詳しく確認していきます。
正確な実働を把握することが難しい
テレワークでは、正確な実働時間を把握することが難しい状況にあります。
なぜなら、PCのログイン・ログアウト時間を記録していても、実際の作業時間と一致するとは限らないからです。
特に、テレワーク特有の「中断」が記録の精度を下げる大きな原因になります。
実働時間と記録がズレやすい具体的なシーンは、以下のとおりです。
- 子どもの対応や家事で席を離れたが、勤務中として記録されている
- 業務と無関係のサイト閲覧中もPCログインが継続している
- 昼休憩を取らずに作業したが、休憩済みとして申告してしまった
- 終業後に上司からメッセージが届き、そのまま対応した
上記のズレは悪意のないケースがほとんどですが、積み重なると給与計算や労働時間管理の信頼性に影響します。
PCログだけに頼らず業務の開始・終了を記録できる仕組みを整えることが、現実的な対策です。
従業員の自己申告になってしまうことがある
テレワークの勤怠管理において、残業を従業員からの自己申告制への過度な依存は法的リスクにつながります。
なぜなら、本人の申告に完全に依存する形では、意図せず実態と乖離してしまう場合があるからです。
自己申告制のリスクは、「サボり」と「働きすぎ」の2つです。
申告より実際の労働時間が少ない場合は実態と異なる賃金支払いにつながり、申告せずに働き続けるケースでは未払い残業が発生します。
勤怠管理システムのPCログ打刻機能を活用すると、PC起動・終了時刻やアプリの操作履歴といったログが自動で記録されます。
そのため、申告内容と実際の稼働時間のズレを客観的に確認することが可能です。
厚生労働省のガイドラインでも、自己申告の労働時間とPCログに著しい乖離がある場合は実態調査の実施が求められています。
自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
引用:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置 に関するガイドライン」
特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
調査結果をもとに労働時間を補正することも、企業側に課された対応です。
自己申告制を維持する場合でも、客観的な記録との突き合わせができる体制を整えることが大切です。
申告任せの運用を続けることは、未払い残業の発生リスクを高めるだけでなく、行政指導の対象になる可能性もあります。
コミュニケーション不足で生産性が低下する
テレワーク環境では、コミュニケーション不足が生産性の低下につながりやすい点も大きな課題です。
なぜなら、オフィスであれば「ちょっといいですか」と声をかけて即座に確認できることが、テレワークでは返信を待つ時間に変わるからです。
「判断待ち」の時間が積み重なることで、業務全体の進行が遅れ、手戻りも発生しやすくなります。
また、労働時間が増えているにもかかわらず成果が出ない「見えない非効率」が生まれやすい点も見逃せません。
社員本人は一日中PCに向かっていても、待機時間や確認作業に多くの時間を費やしているケースがあります。
管理側からはログイン時間だけが見えるため、こうした非効率は気づかれないまま放置されやすい状況です。
勤怠管理はあくまで土台であり、その上に適切なマネジメントの仕組みを重ねることが重要です。
厚生労働省が公表する「テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き」では、テレワークによる孤立化への管理職によるマネジメント強化策としてオンラインの面談が挙げられています。
テレワークではお互いの状況や業務の状況が把握しづらいこと、情報通信技術のスキルが不足している労
引用:厚生労働省「テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き」
働者では訴えの声をあげづらく、孤立化しやすいというリスクがあることから、月1回、上長と1 on 1で面談
を実施している。
チェックイン・チェックアウトの記録と、タスク管理ツールや定期的な1on1を組み合わせることで、見えにくい非効率を早期に発見しやすくなります。
勤怠データだけでなく業務の進捗状況やコミュニケーションも合わせて把握する仕組みを整えることが、テレワーク環境での生産性維持につながります。
勤務態度評価がわかりにくく人事に影響する
テレワークは勤務態度の評価が難しくなり、人事制度全体に影響が及ぶリスクがあります。
なぜなら、テレワークでは勤務態度が可視化されにくく、評価者が成果のみで判断せざるをえない場面が増えるからです。
出社勤務であればこうした行動が自然と目に入りますが、テレワークではその機会がほとんどありません。
出社とテレワークで「見えるもの・見えないもの」の違いは、以下のとおりです。
| 評価項目 | 出社勤務 | テレワーク |
|---|---|---|
| 始業・終業の様子 | 直接確認できる | 記録頼りになる |
| 報連相の頻度 | 自然に把握できる | チャット履歴でしか確認できない |
| 積極性・主体性 | 発言・行動から見える | 成果物からしか判断しにくい |
| 周囲への協力姿勢 | 日常的に観察できる | ほぼ見えない |
このように、テレワーク環境では評価者によって判断基準がばらつきやすくなります。
同じ働きをしていても、評価者の主観や情報量の差によって結果が変わるリスクがあります。
公平な人事評価を維持するためには、勤怠データの整備に加え、行動評価の基準を決めておくことが大切です。
より公平な人事評価をするには、「タレントマネジメントシステム比較15選!おすすめのサービスを選び方から丁寧に解説!」を参考にしてください。

