TPiCS-Xは、繰返生産や少量多品種、個別受注生産など、複数の生産方式に対応する製造業向けの生産管理システムです。独自のf-MRPや製番管理を組み合わせられるため、生産計画や在庫・発注管理の見直しを検討している企業にとって候補の一つになります。
ただし、買い切りとサブスクリプションでは料金体系が異なり、利用できる機能もシステム構成やオプションによって変わります。
本記事では、TPiCS-Xの特徴や機能、料金、サポート・セキュリティ体制、実際の導入事例までまとめて解説します。
TPiCS-Xとは
TPiCS-Xは、株式会社ティーピクス研究所が開発・販売する製造業向けの生産管理システムです。繰返生産から少量多品種、個別受注・一品生産まで、異なる生産方式が混在する現場にも対応できます。
中核となるf-MRP(需要変動に柔軟に対応するTPiCS独自のMRP方式)では、受注や需要予測、在庫などをもとに所要量を計算し、需要変動を考慮した生産計画を作成できます。複数の生産方式や受注形態を一つのシステムで管理したい企業は、比較候補に入れておきたい製品です。
| 製品名 | TPiCS-X Ver5.2 |
|---|---|
| 提供形態 | オンプレミス クラウドサーバー環境での利用に対応 |
| 対応する生産方式 | 繰返生産 少量多品種生産 個別受注生産 一品生産(オプション)など |
| 主な対応業種 | 製造業(自動車部品、電子基板、工作機械、プレス加工、食品加工、化学製品、ゴム製品など) |
| 料金 | 買い切り:120万円~(税別) サブスクリプション:月額49,091円~(税別) |
| 無料トライアル | デモ版貸出あり(貸出期限3週間) |
| 外部連携・API | テーブル連携 WebAPI連携に対応(トランザクションインターフェースオプション) |
| サポート体制 | Eメール 電話 リモートサポート データ検証 研修会 訪問サポートなど |
また、TPiCS-Xの運営会社については以下のとおりです。
| 運営会社 | 株式会社ティーピクス研究所 |
|---|---|
| 所在地 | 〒112-0011 東京都文京区千石4-8-6 |
| 設立 | 1984年10月15日 |
| 事業内容 | 生産管理システム「TPiCS」シリーズの開発・販売 |
TPiCS-Xの特徴
TPiCS-Xは、単に受注や在庫を管理するだけでなく、生産形態に合わせて計画方法そのものを使い分けられる点が特徴です。特に、独自のf-MRPと複数の製番管理方式を組み合わせることで、繰返生産から個別受注・一品生産まで幅広く対応できます。
独自のf-MRPで需要変動に強い生産計画を作成
TPiCS-Xでは、独自のf-MRPにより、受注・内示・販売予測や現在の在庫状況をもとに所要量を計算します。BOM(部品表)に沿って製品から末端部材まで計画を展開し、必要な時期と数量に応じた手配計画を自動作成できる仕組みです。
基準在庫やロットサイズ、製造・調達リードタイムなども設定でき、需要が変化した場合は最新情報をもとに計画を再計算できます。需要変動への対応と、生産計画の安定性を両立したい企業に適した考え方といえるでしょう。
f-MRPと製番管理をアイテム単位で使い分けられる
TPiCS-Xでは、製品・中間ユニット・部品などのアイテムごとに、f-MRPと製番管理のどちらを使うか設定できます。例えば、最終製品は受注ごとに製番管理し、共通部品はf-MRPでまとめて手配するといった運用が可能です。
見込み生産と受注生産が同じ工場に混在している場合でも、それぞれの特性に合った計画方法を一つのシステム内で使い分けられます。複数の生産形態を抱える企業にとって、TPiCS-Xを検討する大きな理由の一つです。
B・S・Fの3種類の製番管理方式に対応
TPiCS-Xでは、受注単位で生産や部材を管理する「製番管理」に、B製番・S製番・F製番の3方式を用意しています。生産や受注の特性に応じて製番の使い方を変えられる点が特徴です。
| 製番方式 | 特徴 |
|---|---|
| B製番 | 製品から末端部品まで製番でつなぎ、受注ごとに計画・構成を管理 |
| S製番 | 中間ユニットなどを先行して手配し、受注確定後の製番へ引き当て |
| F製番 | f-MRPで作成した計画を製番に紐付けて管理 |
個別受注品を一から手配する場合だけでなく、受注前に共通ユニットを先行生産したい場合や、f-MRPの効率的な手配と製番管理を組み合わせたい場合にも対応できます。
一品生産オプションならマスター登録なしでも計画・手配できる
受注のたびに設計内容が変わる一品生産では、事前にすべての製品構成をマスター登録することが難しいケースがあります。TPiCS-Xの一品生産オプションでは、アイテムマスターを事前登録せずにプロジェクト計画を作成し、設計できた部分から手配・生産を進められます。
構成情報変換オプションを併用すれば、CADなどから出力した構成情報を取り込み、生産用の構成として活用できます。 また、過去の計画を複写し、構成を変更しながら新しい計画を作成する運用にも対応します。受注後に設計を進める機械・設備や試作品など、一品ごとに仕様が異なる生産を管理したい企業が検討しやすい機能です。
TPiCS-Xの機能一覧
TPiCS-Xは、生産計画やBOM、実績・在庫・原価管理など、製造業の生産管理に必要な機能を幅広く備えています。
さらに、工程管理やトレーサビリティ、複数拠点管理、外部システム連携などをオプションで追加でき、自社の生産形態や管理レベルに合わせて機能を拡張できます。
基本機能
TPiCS-Xでは、生産計画の作成から資材手配、実績・在庫・原価管理まで、生産管理の基本となる機能を利用できます。
| 機能 | 主な内容 |
|---|---|
| 生産計画 | 需要・受注・在庫・発注残などを考慮した生産計画や所要量計算 |
| 製番管理 | 受注オーダー単位の計画・手配・進捗・原価管理 |
| BOM・アイテム管理 | 製品・部品・工程などのアイテム管理、製品構成やリビジョンの管理 |
| マスター管理 | アイテム、製品構成、単価、標準作業時間などの登録・一括メンテナンス |
| 購買・発注管理 | 発注先の選択、注文書発行、仕入先へのメール送信など |
| 実績管理 | 生産実績、受入・検収、不良など各種実績の登録 |
| 在庫・棚卸管理 | 在庫の受払履歴、滞留在庫の確認、ノンストップ棚卸・循環棚卸 |
| 原価管理 | 製品別・部門別・製番別などの原価集計、予定原価と実績原価の比較 |
| ファイル入出力 | CSV・TSV・XML・Excel・JSON形式などによるデータ入出力 |
| 単位・通貨管理 | 数量の単位換算、仕入・販売単位の換算、多通貨への対応 |
| カレンダー管理 | 工場・設備・取引先などの稼働日やシフトを考慮した計画管理 |
| 買掛・支払管理 | 検収実績からの買掛明細作成、支払予定・支払実績の管理 |
| 権限管理 | ユーザー・役割ごとの閲覧・編集・アクセス権限設定 |
※利用できる計画作成機能などは、繰返生産システム・f-MRP製番管理システムなど、選択するシステム構成によって異なります。
オプション機能
TPiCS-Xでは、導入時にすべての機能を追加する必要はなく、必要な業務領域に応じてオプションを段階的に追加できます。
| オプション機能 | 主な用途 |
|---|---|
| 部門別ガントチャート | 設備・ライン・担当者ごとの負荷や計画を可視化 |
| 自動平準化 | 設備やラインの能力を考慮して生産計画を自動調整 |
| 複数ロケーション | 工場・倉庫・外注先など拠点別に在庫や計画を管理 |
| 一品生産 | 個別設計品や試作品など一度限りの生産を管理 |
| 構成情報変換 | CADやExcelなどのE-BOMを生産用のM-BOMへ変換 |
| セット生産 | 複数品目を組み合わせた生産計画に対応 |
| プル生産 | 後工程からの要求を起点とした補充・生産を管理 |
| 受注販売管理 | 受注・出荷・売上・請求・入金までを管理 |
| 見積管理 | 見積依頼や見積回答などを管理 |
| 納期回答 | 在庫・仕掛・調達期間を考慮して納期をシミュレーション |
| 工程管理 | 各工程の日程や実績を詳細に管理 |
| 着手信号機 | 部材の準備状況などから作業着手の可否を判断 |
| 払出管理 | 倉庫から製造現場への部材の払出指示・実績を管理 |
| 製造履歴管理 | 原材料から完成品までのロット・製造履歴を追跡 |
| 代替生産 | 部品不足時などに代替部品を使用した生産計画を作成 |
| リソース管理 | 設備などの能力・稼働・メンテナンス計画を管理 |
| トランザクションインターフェース | テーブル連携やWebAPIで外部システム・IoT機器などと連携 |
| 内部統制 | 操作・変更履歴や承認などを管理 |
| SCM | 仕入先・協力会社と注文や納期回答などの情報を連携 |
必要なオプションだけを追加できるため、まず基本的な生産管理から導入し、運用の高度化に合わせて管理範囲を広げる使い方も可能です。
TPiCS-Xのサポート・セキュリティ体制
TPiCS-Xでは、導入後の問い合わせ対応から運用相談、研修まで複数のサポートが用意されています。
また、ユーザー・役割ごとのアクセス権限を設定でき、必要に応じて操作履歴や承認を管理する内部統制機能も追加できます。
サポート体制
TPiCS-Xのサポートセンターでは、システムの機能・操作方法だけでなく、TPiCS-Xを使った運用に関する相談にも対応しています。
- Eメール
- 電話
- リモートサポート
- データ検証
- オンライン問題解決サービス
- 出張サポート
- 訪問インストール
- バージョンアップ支援
- 研修
通常のサポート受付時間は、平日の9:30~12:00、13:00~16:30です。
「あんしん保守サービス」「スタンダード保守サービス」の加入者は、Eメール・電話・リモート・データ検証を追加料金なしで利用できます。未加入の場合などは、問い合わせ内容に応じてスポット料金が発生します。
最新版のTPiCS-X Ver5.2は公式の「サポートレベル1」に該当し、必要に応じたプログラムソースからの調査や、不具合修正などもサポート対象です。
セキュリティ体制
TPiCS-Xでは、ユーザーや役割ごとに利用できる機能や表示範囲を細かく制御できます。
| ユーザー管理 | TPiCS-Xを利用するユーザーを個別に登録してログインを管理 |
|---|---|
| グループ管理 | 部署などの単位でユーザーをまとめて管理 |
| ロール管理 | 営業・製造・管理者など、ユーザーごとに複数の役割を設定可能 |
| アクセス権限 | 画面や機能ごとに「操作・編集」「閲覧のみ」「アクセス不可」を設定 |
| Windows認証 | Windowsのログインユーザーを利用した認証に対応 |
| 修正履歴管理 | データの追加・訂正・削除などの変更履歴を記録 |
| 承認管理 | 発注や見積などで、権限を持つ担当者による承認フローを設定 |
※内部統制オプションの機能を含みます。
例えば、原価や単価を管理者だけが閲覧できるようにするなど、担当業務に合わせたアクセス制御が可能です。
なお、TPiCS-Xは社内サーバーのほか、Amazon EC2やMicrosoft Azureなどのクラウドサーバー上でも運用できます。サーバーやVPN、ネットワークなどのセキュリティ対策は導入環境によって異なるため、自社の構成に合わせて確認する必要があります。
TPiCS-Xの料金
TPiCS-Xの料金体系は、社内サーバーへの導入に適した買い切り型と、クラウドサーバー環境で利用しやすいサブスクリプション型の2種類が中心です。買い切り型はソフトウェアを永続的に利用でき、サブスクリプション型は月額または年額で利用できます。
| 利用方式 | 料金の目安 |
|---|---|
| 買い切り(オンプレミス) | 120万円~170万円 |
| サブスクリプション(月額) | 月額49,091円~69,546円 |
| サブスクリプション(年額) | 年額54万円~76万5,000円 |
| スタートパック | 148万6,000円~ |
※2026年5月時点の公式価格。買い切り型では初年度の保守サービス購入が必須です。サブスクリプション料金にはスタンダード保守サービスが含まれています。別途、オプションや稼動クライアント数などによって料金が変わります。
基本システムは、「繰返生産システム」「製番管理システム」と、両方の機能を備えた「f-MRP製番システム」から選択します。さらに工程管理や複数ロケーションなどのオプション、同時稼動ユーザー数に応じたライセンスを追加する仕組みです。
買い切り型では導入後にオプションやライセンスを追加できる一方、サブスクリプション型では毎月構成を見直せます。導入時点で必要な機能や利用人数を確定しにくい企業は、運用変更のしやすさも含めて料金方式を比較するとよいでしょう。
TPiCS-Xの導入実績からわかること
TPiCSの公式ユーザー事例では、多品種少量生産や需要変動への対応、在庫・購買業務の改善など、さまざまな製造現場での活用実績が紹介されています。ここでは、TPiCSの機能が実際の現場でどのような成果につながっているのか、2社の事例から紹介します。
購買部門の工数を約4割削減
キッチン用品メーカーの株式会社伸晃では、旧システムの所要量計算が月1回に限られ、担当者がExcelなどで在庫を確認しながら発注量を調整していました。TPiCS導入後は所要量計算を日常的に行えるようになり、人手による計算作業を自動化した結果、購買部門の工数を従来比で約4割削減しています。担当者1人あたりの残業時間も1~2時間ほど減少したとされています。
約1年のテスト期間を経て2023年10月から本格運用を始めた。製品点数が多く、生産形態も多岐に渡る中、TPiCSの持つ柔軟性と日々、所要量計算が行える効果が現れ、購買部門では業務工数を4割削減。
引用:TPiCS公式「21株式会社 伸晃」
この事例からは、需要や在庫状況に応じて所要量を継続的に計算することで、発注業務の効率化と属人化の軽減につなげられることがわかります。需要変動が大きく、担当者によるExcelでの調整作業が増えている企業では、f-MRPを活用するメリットをイメージしやすい事例です。
3,200品種の多品種少量生産でも中間在庫を削減
DUEL Vietnam Inc.は、3,200種類を超える釣り具を製造し、製造工程の95%を手作業で行う多品種少量生産の工場です。TPiCS導入後は、仕掛品を含む在庫状況をシステム上で把握し、f-MRPによって本社からの発注量変更にも対応しやすくなりました。その結果、中間在庫や完成品の不動在庫が減少し、本社への在庫買い取り依頼も現在は行っていないと紹介されています。
2021年、旧システムからTPiCSへの移行を決定。しかし製造する釣り具・浮きの品種は3,200種で製造工程の95%は手作業、という多品種少量生産の現場であることから、現地社員より新システムの導入に対する不安が噴出。約2年間の停滞の中、SI会社(有)ソルパックベトナ
ム(以下SI会社)も粘り強い打ち合わせのもとTPiCSの利点を生かしながら現場の要求を満たすシステム導入をサポート。現在ではトラブルのないスムーズな稼働に加え、中間在庫の削減などの成果も。現地社員からも高く評価される生産管理システムとして定着している。
引用:TPiCS-X公式「23DUEL Vietnam Inc.」
この事例からは、品種数が多く需要変更が発生する複雑な製造現場でも、計画と在庫情報を連動させることで過剰生産を抑えられる可能性があることがわかります。手作業の工程が多い工場でも活用されているため、設備の自動化が進んでいない企業にとっても参考になる事例です。
